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2005年9月27日 (火)

人生は、時々晴れ

2002年 イギリス・フランスdan01bw
監督、脚本:マイク・リー
出演:ティモシー・スポール、レスリー・マンビル
    アリソン・ガーランド、ジェイムズ・コーデン

  なんとも気が重くなるようなイギリスの下層の生活がこれでもかとばかりに描き出される。口数の少ない、見るからにうらぶれたタクシー運転手(ティモシー・スポール)。奥さんはしっかり者だが口うるさい。彼女もスーパーでレジのアルバイトをしているが、生活はぎりぎりだ。太った娘も老人施設のようなところで清掃の仕事をしている。まじめに働いている子だ。しかし息子は、これまた太っていて、何も仕事をせず一日中ぶらぶらして、親に口答えしてばかりいる。母親に汚い言葉を投げつけても、父親は何も言わずただ黙って見て見ぬふりをするだけ。隣は母娘の家庭で、娘には恋人がいるが、やがて妊娠が発覚する。しかし相手の男は無責任で絶対産むなと言って出てゆく。そのまた隣の家の娘はいつも家の前をぶらぶらしている。変な若い男が彼女にまとわりついているが、彼女は歯牙にもかけていない。隣の妊娠した娘の恋人に岡惚れしている。父親は最初の家族の父親と同じタクシー会社の同僚である。妻はアル中でほとんど廃人寸前。

  イギリスの下層の生活はこんなものなのだろうか。「マイ・ネーム・イズ・ジョー」「がんばれ、リアム」など出口のない気のめいる映画がイギリスには多いが、確かにこれらはイギリスの現状を伝えているのだろう。しかしこの映画の重苦しさは複数の家族の日常生活を描いているだけに、遥かに暗く、重く、よどんでいる。どこでもそうなのだという気持ちになってくる。ディケンズの小説の中にはもっとすさまじい貧困と怪物のようになった人間が出てくるが、戯画化したり、どこか突き放して客観的に書いたりしているのでこのような重苦しさはない。なまじそれぞれの家庭に密着して具体的に描いているので、逃げ道がないように思えてくるのだ。

  しかし、最後にわずかな光明が見出せる。最初の家族の太った息子がサッカーをしていた時、突然発作に襲われて倒れてしまう。それをたまたま買い物から帰ってきた隣の主婦2人が発見する。すぐに救急車を呼ぶように一人が言うが、もう一人のアル中の主婦はただおろおろするばかりで役に立たない。彼女の娘が事態に気づいて母親を押しのけるようにして電話をかける。普段ぶらぶらしてばかりいる娘だが、緊急の事態にはしっかり対応する姿が描かれている。倒れた子どもの母親は連絡を受けてすぐ夫の車で飛んで行こうとするが、夫に連絡がつかない。アル中の主婦の夫が同じタクシー会社の同僚なので、彼の車で病院に向かう。しかし途中バックしてきたほかの車と衝突してしまう。怒鳴りあう二人のドライバーを残して母親は病院へ走る。しかし夫とはまだ連絡がつかない。

  実はそのとき何もかもいやになった彼女の夫は、タクシーの無線も携帯も電源を切って、テムズ川の河口あたりと思われるところに車を止めて考え事をしていたのだ。自殺するのshot7かと思わせる気配もあった。だが、やがて気持ちが晴れたのか父親は仕事に復帰し、息子の入院を知り病院に駆けつける。妻と激しくやりあうが、幸い息子の命に別状はなかった。ただ一生薬を飲み続けなければならないと医者に言われる。ベッドに横たわる息子は人間が変わったようになり、以前のとげとげしい口の聞き方をしなくなる。息子の病気とその変化をきっかけに、その家族は立ち直り始める。父親は妻に向かって、お前は俺を愛していないんだと泣いて訴える。妻は心を動かされる。この何年かの間で初めて本心から交わした会話だったのだろう。お互いに愛を確認しあった後、2人は家庭を立て直す努力を始める。

  最後にわずかな光明が見出せるのが救いだ。ケン・ローチ、マイク・リー、リン・ラムジー、マイケル・ウィンターボトムなど、何人もの監督たちがイギリスの現状を描いてきた。貧困、無教養、無気力、麻薬禍、退廃等をリアルに描きながら、同時に必死で生きようとする人たちのもがきをどう描くのか。これがこれからのイギリス映画の課題となるだろう。簡単に出口は見出せないが、出口がなければ、希望がなければ人は生きられない。この出口なき現状に、どのようにして安易ではない出口を描き出すのか。映画人たちの苦心と努力は続くだろう。

  主演はティモシー・スポール。「ラスト・サムライ」でカメラマンを演じていた、あの太ったおっちゃんだ。イギリスの庶民を演じさせたらまさにうってつけの役者である。だらしなく太り、年中同じ服を着ている感じで、だらけた生活を日々おくっている情けない中年男、そんな役がぴったりはまる。

  90年代以降のイギリス映画にはケン・ローチ監督の作品を初め、庶民生活を描く作品が目立って多くなっている。したがって、ダニエル・デイ・ルイスやヒュー・グラントのようないかにも貴公子然とした俳優ではなく、ロバート・カーライルやユアン・マクレガーのような、不満だらけで鬱屈した労働者や町のあんちゃんが似合う役者が台頭してくる。ピート・ポスルスウェイトやブレンダ・ブレッシン同様、本来脇役が似合うティモシー・スポールも時代の流れに後押しされて、今やどうどう主役を張っているのである。その彼が一転して日本人真っ青の猛烈セールスマンに扮したのがダニー・ボイル監督の「ヴァキューミング」だ。主人公トミーは電気掃除機の販売員で、完全な仕事人間。全く逆の役柄になりきってしまう。すごい俳優だ。

  監督は「秘密と嘘」のマイク・リー。「秘密と嘘」はケン・ローチの「レディバード・レディバード」とならび、秀作・話題作ひしめく90年代イギリス映画の中でも頂点に立つ傑作である。次の「キャリア・ガールズ」はがっかりしたが、「人生は、時々晴れ」はなかなかの秀作。現在のイギリス映画界を支える重要な監督の一人である。

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