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2005年9月 3日 (土)

SWEET SIXTEEN

mintglass2002年 英・独・スペイン
監督:ケン・ローチ
出演:マーティン・コムストン、ウィリアム・ルアン
アンマリー・フルトン、ミッシェル・クルター
ゲイリー・マコーマック、トミー・マッキー

 観る前はジャケットの写真から何かひどく歪んでひねくれた若者の映画だろうと思っていた。確かに麻薬を売って儲けたりはするが、主人公リアム(マーティン・コムストン)は意外にまともである。麻薬も母親の愛人が隠していたものを盗んだもので、彼自身も親友のピンボール(ウィリアム・ルアン)も麻薬をやってはいない。彼が麻薬に手を出してまで金を手に入れたかったのは、彼の16歳の誕生日に刑務所に入っている母親が釈放されるので、母親のために新しい家を手に入れたかったからだ。

 母親は何をやって刑務所に入れられたのかはっきり描かれていない。しかし麻薬に手を出していたことは面会のときの会話で分かる。母親の愛人とその父親はリアムを使って母親に麻薬を渡そうとする。母親は自分が使うのではない、人に渡せばいい金になるのだと弁解するが、リアムは渡すことを拒否する。その結果母親の愛人とその父親に散々殴られる。この一連のエピソードで彼が悲惨な家庭環境の下で育ったことが分かる。にもかかわらず、彼は母親の釈放を心待ちにしている。温かい家庭に飢えているのだ。麻薬を使った金儲けという違法な手段に訴えはするが、それは他にまともな仕事がないことを示している。今のイギリスは浮かび上がろうにも、まともな手段では出来ないのである。必死になって母親のためにまともな家を確保しようと努力するリアムの気持ちがいじらしい。

 しかし麻薬に手を出したため、ボスににらまれ手足として使われることになる。母親の愛人はせっかくリアムが手付金を出して確保しておいた家(いかにも安物だが)に火をつけて燃やしてしまう。それどころか、出所してきた母親も最初の晩だけは歓迎パーティーに出て楽しそうにしていたが、結局翌朝出て行って愛人のところに戻ってしまう。それにはリアムの姉が絡んでいる(彼女だけのせいではないが)。姉はまだ十代で子供をもうけたが、幸せに暮らしている。母親への憎しみは骨がらみで、決して母親を許そうとはしない。散々裏切られてきたからだろう。彼女の気持ちも理解できる。むしろひたすら母親を思うリアムの気持ちの方が不自然と言えば不自然だ。それはともかく、このあたりの描写は実にリアルで、安易な出口mintglass3を与えようとはしていない。

 母親の後を追って実家に行き、母親の愛人と口論の末、リアムは相手を刺してしまう。ふらっと海岸に出たリアムの携帯に姉から電話が入る。「今警察がお前を捜している。大丈夫なの?」呆然と海岸に立ちすくむリアム。これがラストシーンだ。

 ディケンズの「われらが共通の友」にチャーリー・ヘクサムという人物が出てくる。父親はテムズ川で死体を浚い、それが身につけている金品を奪ったり家族からの報奨金で生活している。社会の最底辺で暮らしている一家だ。チャーリーはそのおぞましい暮らしからの脱出を願い、教育者となって身を立て、それから姉のリジーを救い出そうと決心する。その限りではきわめてまともな思いだった。しかし出世街道を進むうちに、出世それ自体が自己目的化してゆき、ついには慕っていた姉のリジーや師と仰いでいた恩師も自分の出世の妨げになると切り捨ててゆくような冷酷な人物になってゆく。作者の共感はリジーの側にあるが、彼は安易にチャーリーを挫折させはしない。完成した最後の小説でディケンズが到達した冷徹なリアリズムである。

 リアムは、言ってみればまだ変心する前のチャーリーである。ラストシーンでのリアムは実に微妙な立場にいる。せっかくの思いをまともに受け止められないだらしない母親に、自分の努力をむなしいと感じたのか?人を刺した以上、彼自身が母親と入れ替わるように刑務所に入ることになる。そうなった後でも彼はまともな気持ちを持ち続けられるのか?小説のように長く描けない映画は結末以後を観るものの想像にゆだねる。見るものの思いは社会にも向けられるだろう。まともな感覚を持ちながら、チンピラとしてしか生きられないリアムやピンボールの様な若者たち。彼らが這い上がる余地を与えない社会。21世紀のチャーリーは今後どのように生きるのか。

 このところ出口のない気が重くなるような作品が多かったケン・ローチ作品としては、かすかながらまだ光が見出せる作品である。2000年以降の作品としては一番優れているのではないか。主人公を演じたマーティン・コムストンはまったくの素人で、サッカーのプロチームの選手だった。サッカーをやめて(趣味としては続けるようだが)俳優を志すそうだ。期待したい新人である。03年のキネ旬ベストテンでは選外だったが、傑作ぞろいの03年公開作品の中でもベスト20に入れたい傑作である。

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コメント

真紅さん コメントありがとうございます。
ケン・ローチの作品はどれも水準の高い作品ばかりですが、あまりに暗すぎて好きになれないものもあります。この映画は「やさしくキスをして」同様、安易な解決を見出していないのですが、しかし同時にほのかな希望も感じさせる映画です。
どうもがいても這いあがれない絶望的な状況を、現実から目を背けることなく、かつ絶望に落ち込むことなく描くにはどうすればいいのか。彼の映画はリアリズムの問題を考えるときに優れた題材となります。どの作品も十分な検討をしてみるに値する。
次はどんな作品を作ってくるのか。次回作を待ち望む監督はそう多くありません。僕にとって、ケン・ローチはその数少ない監督の一人です。

ゴブリンさま、こんにちは。この映画私も素晴らしいと思いました。
リアム役のマーティン・コムストンは『明日へのチケット』にも出ていましたが、本作がデビューだったのですね。
デビュー作とは思えない存在感、演技力で驚きました。
挫折のない青春なんて嘘だと思います。リアムの挫折は悲しすぎるけれど、まだ16歳なんだというところに希望はあると信じたいです。
ケン・ローチって、やっぱりやさしい人だと思いました。
ではでは。

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