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2005年9月 8日 (木)

犬猫

cyclamen92004年 「犬猫」製作委員会
監督、脚本:井口奈己
撮影:鈴木昭彦
美術:松塚隆史
出演:榎本加奈子、藤田陽子、西島秀俊
    忍成修吾、小池栄子

 各種映画評で肯定的に評価されていたので楽しみにして観た。多くの批評は主演の一人藤田陽子(スズ役)をほめていたが、榎本加奈子(ヨーコ役)も意外によかった。意外にというのはそれまで彼女をいいと思ったことがなかったからだが、メガネをかけた地味な顔がなんとも魅力的で、それまでの彼女とはまったく違うキャラクターになっていた。そこがいい。

 一方の藤田陽子はCMで活躍していたり、「模倣犯」「犬と歩けば」などの映画に出ていたらしいが、この2本は観ていないのでまったく知らなかった。驚いたのは「茶の味」のエンディング・テーマを作詞し歌まで歌っていたということだ。もともと歌手だったそうだ。ちょっとキーの高いソフトな声で話すのが何となく顔と合わない気がするが、独特のほんわかした雰囲気がこれまたいい。もう一人、友情出演で最初だけ出てくる小池栄子も印象的だ。売れっ子の彼女だが、彼女もまたこれまでどこがいいのかと思っていた。しかしこの映画の中では非常に魅力的だった。編み上げ帽子がよく似合う。どこにもいる普通の女の子のように見えたからかもしれない。あまりにいい感じだったので、最後にもう一度画面に出てきてほしいと思ったほどだ。他に主演の二人とからむ男優が二人出てくるが男はどうでもよろしい。

 この映画はいわば私小説映画である。女の子二人のどうということのない日常を描いている。恋愛と嫉妬も絡んではくるが、大半は家の中でごろごろしている光景だ。布団を敷いたり(シーツを敷くときスズはただ表面をパタパタたたくだけですそを織り込まないところが可笑しい、普段もそうしているのか?)、料理を作ったり、ちゃぶ台で食事をしたりといったごく日常的な描写が続く。互いに交わす言葉も特にどうということのない日常的な会話だ。一方男との会話はさっぱり弾まない。若い女性二人の等身大の日常生活がさらりと描かれているだけだ。特に劇的な展開があるわけでもない。せいぜいヨーコが密かに憧れていた三鷹(忍成修吾)とスズが急接近して、その腹いせにヨーコがスズの元彼である古田(西島秀俊)の家で一晩過ごすことぐらいだ。翌日ヨーコはスズに昨日古田と寝た(実は、古田は夜バイトに出ているのでこれは嘘)と言うとスズはヨーコに飲んでいた酒をぶっ掛けて部屋を出て行く。というような波乱はあるが、どうやらそれも収まってゆく気配だ。

 なんでもない日常の世界を描いているため、ちょっとした目の動きや表情の変化、微妙なせりふや感情の動き、あるいはその場の雰囲気などが重要な要素になってくる。最初に二人の主人公の魅力について触れたのは、まさにこの二人の存在感にこの映画の出来不出来の大部分がかかっているからだ。監督の井口奈己は二人にとにかく力を抜くよう何度も指示したそうだ。二人も本当にその部屋に前から住んでいるような感じを出そうと努力したそうである。その結果がこのよく出来た私小説映画に結実した。

 監督もこの二人の個性をうまく描き分けている。ヨーコはしっかりものだが地味な性格。スズはちょっと天然ボケが入った、こだわらない明るい性格で、料理がうまい。スズは三鷹を家に連れてきて、横で面白くない顔をしているヨーコの前で、「彼女とは昔から同じ男の子を好きになるのよね」などと脳天気に言ったりするのである。普段冴えないメガネをかけているヨーコが、スズに三鷹を取られたときはメガネをはずしてコンタクトをつける。このあたりは女性心理をうまく描いていると思う。なかなか気の利いた演出もある。スズは犬を散歩に連れてゆくアルバイトをしているが、初めてその家に行ったときなかなかその家を見つけられない。そのスズがすねてバイトに行かないのでヨーコが代わりに犬を散歩にcatw_47連れてゆくシーンがあるが、ヨーコもまたその家を探しあぐねてスズと同じように同じところを何度も行ったりきたりする。2回とも同じ角度から撮っていて、二人はまったく同じように道に迷うのだ。何とも愉快なシーンである。

 最近日常的世界を描くこの手の映画が増えてきた気がする。「珈琲時光」「茶の味」も似たような要素があるし、韓国映画の「子猫をお願い」なども多分にこの要素を含んでいる。肯定的に言えば、アメリカなどの派手な演出の映画のアンチテーゼであると位置づけられるだろう。否定的に見れば、自分たちの世界にこもって社会に目を向けようとしない視野狭窄の世代の映画だともいえる。ゲームに夢中になって育った世代は社会に目を向けることをせず、自分の身の回りのことにだけ神経を尖らせる。そういう時代の映画なのか。

 いや、そこまで言ってしまってはこの映画に対して不当な評価をしたことになるだろう。人生の大部分は日常的なことの繰り返しなのである。だからこそたまの休みにどこかへ出かけることが楽しいのだ。人々は日常にしばられ、しばられているからこそそこから逃れたいと願う。映画や小説などはその「願い」の部分を題材とすることが多い。毎日同じ仕事をしていることを描いてもドラマにならないからだ。「Shall We ダンス?」はそういう日常からの脱出という夢を描いた映画だ。いや、他にいくらでもある。西部劇やアクション映画を観て自分もヒーローになったような気分に浸るのも同じことだ。クレージー・キャッツのサラリーマン・シリーズだって一種の夢物語である。あんな脳天気な「無責任男」は現実にはいない。

 しかしその日常の部分に光を当てる映画があってもいいはずだ。小津の映画だってその範疇に入る。日本の私小説もそうだ。ドラマとしては成立しにくいが、登場人物のささやかな夢やあわい恋心、些細な悩み、微妙な感情のゆれ、意識のひだなどをクローズアップすることによって見るものの共感を誘う映画だって成立する。そういう題材になるのは、定職を持たない若い女性が多い。ある程度行動が自由で漂泊する感情の流れが描きやすいからだろう。「珈琲時光」しかり、「子猫をお願い」しかり、そしてこの映画しかり。同じ仕事を繰り返す職場が描かれる場合はむしろそこからの脱出が描かれることが多い。「Shall We ダンス?」しかり、「反則王」しかり。あるいは、普段はしがない会社員またはOLだが、しかしひとたび事件がおきれば・・・。この手の映画やアニメはいくつも思い当たるだろう。しかし日常からの脱出は現実には難しい。だから人は映画や小説の架空の世界にひと時の現実逃避を求めるのである。「犬猫」の冒頭で留学するため中国へ向かうアベチャン(小池栄子)も、それまでは他の二人と同じようにだらだらしていたのに違いない。しかし彼女は日常からの脱出を決意したのである。小池栄子にいつになく魅力を感じたのは、彼女が演じた役柄にこの行動力があったからかもしれない。しかし他の二人は彼女をうらやましく思いながらも、アベチャンを見送った後また日常に戻ってゆくのである。

 こう書いてきて自分でも気付いたが論理がぐるぐる回っている。実際それが日常生活の実態なのだ。日常から脱却したいと願いつつ、やはり日常を繰り返さざるを得ない。ある決意をして新しい人生を送り始めたとたん、それがまた日常になってゆく。人は絶えず日常を繰り返し、また絶えず日常から逃れたいと望み続けるのである。私小説映画の主人公はある意味でアンチヒーローである。「夢」を描く映画には出てこない日常の生活が却って新鮮に映るのが私小説の魅力である。若い女性は自分ひとりで家にいるときは綿入れ半纏を来てコタツで丸まっているのか?!振り返って自分を顧みれば、家の中ではだらしない格好をしているじゃないか。そうだ、そうだとここに共感が生まれる。にもかかわらず「犬猫」のような映画には物足りないものも感じる。やはりどこか息苦しさを感じる。もっと何か突き抜けたものを求めたくもなる。日常を描いてゆけば、イギリス映画によくあるお先真っ暗の暗い映画になってゆく可能性だってあるわけだ。「セールスマンの死」に行き着いたのでは余りに切ない。井口監督もこのタイプの映画ばかり撮り続けるつもりではないだろう。この先小さくまとまらないでどんどん新たな挑戦をしてほしいと願う。

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