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2005年8月28日 (日)

レンブラント 描かれた人生

【製作年度】1936年
【製作国】イギリス
【スタッフ】
 製作:アレクサンダー・コルダ
 脚本:カール・ザックマイヤー
 監督:アレクサンダー・コルダ
 音楽:ジェフリー・トーイ
 撮影:ジョルジュ・ペリナル
【出演】
 チャールズ・ロートン、エルザ・ランチェスター、ガートルード・ローレンス
 エドワード・チャップマン、ジョン・クレメンツ、レイモンド・ハントレー

 アレクサンダー・コルダ監督、チャールズ・ロートン主演。「ヘンリー八世の私生活」のコンビで撮った2作目。悪かろうはずがない。コルダのフィルモグラフィーを見てみるがいい。まるでイギリス映画傑作選のリストを見ているようだ。初期のものはともかく35年以降の作品はほとんどが名作だ。アーサー・ランクとアレクサンダー・コルダはイギリスの2大プロデューサーとして、数々の名作を世に送り出してきたのである。参考までに、少々古いが『現代のイギリス映画』上野一郎監修(河出新書、1955年)から関連部分を引用しておく。

 イギリス映画の全盛をもたらしたもう一つの有力な原因は、その製作機構である。イギリスの制作システムは、アメリカとフランスの中間に位置している。アメリカの大会社システムは強大な資本力によってデラックス級の豪華作品の製作を可能にするが、一方芸術家の自由を制限する。フランスの独立プロ・システムは芸術家の自由を許すが、資本力の不足がしばしば各企画を不発に終わらせる。それに対してイギリスは映画会社の組織のなかに製作プロを包含して、資本力でバックアップしながら製作に関してはプロの自由を最大限に認めるという方法をとった。そのシステムの活用によって芸術家は思いのままに創作活動に専念することができた。戦後のイギリス映画の大半はJ.アーサー・ランクのランク・オーガニゼーションとアレキサンダー・コルダのロンドン・フィルムズの二系統に入るが、優秀な制作者・監督はおおむねその傘下に属している。イギリス映画はその意味で制作者・監督の個性と作風によってさらに特色ずけられると言ってよい。

 「レンブラント 描かれた人生」はレンブラントの愛妻サスキアが死ぬところから始まる。それまでが彼の人生の頂点だった。したがってこの映画は頂点からどん底に落ちてゆく彼の後半生を描いていることになる。

 サスキアが死んだ後レンブラント(正式な名前はレンブラント・ファン・ライン、1608-1669)の生活は苦しくなり、ついには破産宣告を受け家まで競売にかけられて奪われてしまう。そうなったのは依頼人の希望通りには描かないからだ。冒頭でも彼が依頼された仕事をせず、妻のサスキアばかり描いていると揶揄される場面が出てくる。その典型的な例として描かれるのが、有名な「夜警」の絵である。依頼者たちはかっこよく威厳に満ちた絵を期待していたのだが、描かれた絵は薄暗く、人物の半分は誰が誰なのかもわからない。みっともない絵だと笑いものにされ、依頼者たちからは抗議を受ける。しかしレンブラントは人物たちの身分や外見ではなく人物そのものを描いたのだといって譲らない。お前たちで立派なのは帽子だけだろうとあざける。このあたりの豪放な立ち居振る舞いは巨漢の名優チャールズ・ロートンでなければなかなか出せまい。

 しかしこんなことを続けていれば金に困るようになるのは目に見えている。サスキアが死んだ後も彼の面倒を見ている家政婦のヘールチェは仕事を請けろと毎日矢の催促だ。しかしレンブラントは自分の気に入った題材しか描こうとしない。金に困ってもさほどうろたえないが、日々生活が苦しくなってゆくことは確かだ。彼の心情は苦々しげに放った次のせりふによく表れている。(息子に向かって)「大人になっても自由など手に入らんぞ。大人の世界は狭い檻と同じだ。閉じ込められもがき苦しむ。生きている限り絶対に出られない。」

 金がなくてもへこたれなかったのはレンブラントの新しい「妻」ヘンドリッキェも同じである。彼女は新しく雇われた家政婦だったが、彼女を一目見てレンブラントは気に入ってしまいその場でさっそく絵のモデルにした。やがて二人は愛し合うようになる。ただサスキアの遺言が制約になっていて、どうやら正式には結婚できなかったようだ。世間は彼女を「愛人」扱いして教会への出入りを差し止める。二人の生活は苦難続きだったのである。それでも、破産して家を出てゆく時、家具が持ち去られるのを見ながらヘンドリッキェはレンブラントにこう言っている。「小さな家で十分よ。大きな家は嫌いよ、居心地悪いから。狭くても絵は描けるわ。必要なものは少しの服と温かいスープ、そして私。」まるでチャップリンのせりふのようだ。

 しかし映画はそんな二人をただロマンチックに描きはしない。法は容赦なく二人を追い立ててゆく。世間の評判も同じである。画家としては尊敬されていたようだが、それは人物としての評価と重なりはしない。ヘンドリッキェが情熱を込めて上の様に語った直後に客観描写が差し挟まれる。手前に3人の男たちが立っていて、その向こうを追い立てられるようにして家を出て行く二人が通ってゆく。二人を見ながら男たちは語り合っている。「彼は善良な男だった。こんな報いを受けるとは。」「報い?当然の結果だ。金のない男はろくなもんじゃない。」人間の価値は善良さではなく金で判断されるのである。

 ただ絵を描けと怒鳴るばかりだった前の家政婦ヘールチェと違って、ヘンドリッキェは法を逆手にとってレンブラントを守る。彼は破産していたので勝手に絵を売ることができない。絵はまず債権者のものなのである。しかし彼女は自分を画商に仕立てレンブラントをその従業員ということにしてしまう。したがって彼の絵は彼女のものだから彼が勝手に絵を売ったことにはならない。そう言って、勝手に絵を売ったのは法律違反だと押しかけてきた債権者たちを追い返す。なんとも胸のすく場面だ。

 しかし無理がたたって(節約のため女中を雇わず家の仕事を全部彼女が取り仕切っていた)彼女の体は病魔に蝕まれていた。彼女の死が近いと知っていたレンブラントは彼女の絵を描いている。描き始めるときレンブラントは「男に見つめられることになるが、これは画家の視線だから気にすることはない」と彼女に言う。この言葉は二人がはじめて会ってすぐさま彼女の絵を描いた時に言った言葉だ。その先のせりふを彼に代わってヘンドリッキェが続ける。彼が言った言葉をヘンドリッキェは一字一句正確に覚えていた。そうやって二人はひとしきり昔に帰る。その直後モデルとして椅子に座ったまま彼女は静かに死んでゆく。決して涙を誘うような場面ではない。しかし苦労ばかりしてきた二人の生活の中で唯一しっとりとした時間が流れる瞬間である。忘れがたい場面だ。

 この映画のラストがまたいい。レンブラントの最晩年。彼は金もなくすっかり落ちぶれている。彼は知り合いに金を恵んでもらう。その男は肉を食べて体を丈夫にしなさいと親切に言葉をかける。レンブラントはさっそく店に入る。店主はまたたかられると思って追い出そうとする。レンブラントはカウンターにこれ見よがしに金を投げ出し、そして肉ではなく画材を買って行く。落ちぶれても彼は画家だった。金や名声などどうでもいいという心境に達していた。彼が最後に到達した心境は「空は空なり(Vanity is vanity.)」というものだった。

 レンブラントは終始芸術的信念と健全な精神を持った人物として描かれている。卓越した芸術家特有の狂気にも近い屈折した面は全く描かれていない。77年にオランダのヨス・ステリング監督が「レンブラント」という映画を撮っているが(未見)、こちらは彼の狂気も描きこんでいるようだ。二つの作品を比べれば物足りないと感じる面もあるかもしれないが、彼のヒューマンな面を強調した作品ととらえればいいだろう。

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