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2005年8月31日 (水)

一票のラブレター

2001年 イラン映画
監督:ババク・パヤミ
出演:ナシム・アブディ、シラス・アビディ

 1993年にアッバス・キアロスタミ監督の「友だちのうちはどこ?」と「そしparfum3て人生は続く」の2本が日本で公開されて以来、イラン映画は毎年確実に数本ずつ公開されている。映画館でこの2本をまとめて観た時、その素朴さと新鮮さに驚いたものだ。それ以来すっかりイラン映画のファンになってしまった。日本での公開本数は少ないが、その水準はきわめて高い。日本で最初に広く注目を集めたイラン映画は99年公開の「運動靴と赤い金魚」だろう。翌年公開の「風が吹くまま」「太陽は、ぼくの瞳」はいずれも傑作だった。02年には「酔っ払った馬の時間」と「カンダハール」が公開され、高い評価を受けた。03年には「少女の髪どめ」と「1票のラブレター」という愛すべき作品が日本に届けられた。今回はその内「1票のラブレター」を紹介したい。

投票を訴える女性
 イラン映画はどれもそうだが、この作品も実に素朴な映画だ。キシュ島に選挙管理委員の女性がやってきて、護衛の兵士と共に島中を回って投票を訴えるというそれだけの映画だ。キシュ島は砂地に所々木が生えているだけの、ほとんど砂漠のような島だ。店の一軒も出てこない。点々と家があるだけだ。島民は貧しく、教養もない感じだ。いくら投票を訴えてもなかなか投票してもらえない。自発的に投票に来る人たちもいるが、ほとんどは特定の候補に投票させようと女たちを引っ張ってきたケースだ。投票する必要はないと拒否する男たち、自分の判断では投票できないと断る女たち。それでもめげずに訴え続ける主人公には感心する。中でも印象的なのは神に投票すると言って譲らなかった老人だ。神は候補者リストに載っていないと言ってもきかない。一緒に島中を回った兵士も最後に投票するが、彼は主人公の名前を書く。候補者は誰も知らない、知っているのは君だけだと言って。どんなに断られても最後まで島を回って投票を訴え続けた彼女を立派だと思ったのだろう。彼女に対する淡い感情もあったかも知れない。おそらくタイトルはここから来ている。

砂漠の信号機
 もう一つ印象的な場面は、見渡す限り何もない道を走っていて赤信号に出くわす場面だ。兵士は律儀に停止する。時間がない主人公は、車から降り、他に車がないのだから停まっていても無意味だと説得する。今まで法を説いてきたのに、今度は法を無視するのかと兵士。主人公はこんなところに信号をつけること自体が間違っていると怒る。それでも動かないので車に戻ると、兵士はすぐ車を出す。まだ信号は赤だ。どうして渡ったのかと聞く彼女に、兵士は故障しているから修理する必要があると答える。実に愉快なエピソードだ。

ユーモアとリアリズム
 この映画は何を描いているのか。ビデオの解説を見ると、発売元は一種のファンタジーとして扱っているようだが、いかにわれわれから見て御伽噺のように思えたとしても、この映画はまったくのリアリズム映画である。フィクションではあっても決してファンタジーではない。また、これは政治的プロパガンダでもない。女主人公は投票の意義を訴えるが決してそれ以上のことは言わない。島民と主人公の会話を通して島の現実を描き出しているだけだ。島民の意識の遅れは深刻だが、彼らの言葉は一面の真実を伝えてもいる。島民たちは皆彼女に投票すれば変わるのかと聞く。彼女はすぐには変わらないと答える。実際その通りなのだ。中央の政治はまだこの島に及んでいない。せいぜい役に立たない信号器を取り付ける程度なのだ。その意味で、投票の必要はない、信じられるのは神だけだ、という彼らの言葉にはリアリティがある。その島民たちと真剣な主人公の意識のズレがどこかユーモラスな味わいをほんのりかもし出しているのである。

  厳しい検閲を逃れるために多くのイラン映画は子どもを主人公にすると言われているが、この作品は投票を呼びかけるという批判の余地のない大義名分を押し出しながら、まったくの大人の世界、政治の世界を徹底したリアリズムで描いてしまっている。実に貴重な作品である。

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