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2005年8月31日 (水)

殺人の追憶

tuki-siro2003年 韓国
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイル、キム・レハ
    ソン・ジェホ、ピョン・ヒボン

 なかなかの力作だった。ただ思っていたよりコミカルな要素が強かったので驚いた。何となく「カル」のような血なまぐさい、不気味さが漂う映画だと思い込んでいたのだ。確かに連続女性猟奇殺人事件を扱っているので、死体の様子などはおぞましいのだが、時代が80年代末から90年代初めにかけてであり、しかも田舎の事件なので刑事たちが実にとろいのである。さすがにソウルから来た刑事(キム・サンギョン)だけは鋭いのだが、地元の刑事たちは足で捜査すると称して安易に容疑者を犯人と断定し、拷問や脅しで自白を強要しようとする。どこか「踊る大捜査線」を思わせるノリだ。そのとろい田舎の刑事を顔のでかいソン・ガンホがいかにも田舎くさく演じている。しかし「踊る大捜査線」のようなおちゃらけた映画ではない。当時の田舎の警察の犯罪捜査レベルの低さをある意味でリアルに(誇張はあるだろうが)描いているのだ。連続猟奇殺人事件などまったく経験したことがない田舎なのだ。もっともソウルでもこんな猟奇的事件はなかったわけだが。実話が題材で、いまだに犯人は見つかっていない未解決事件だ。

 ソン・ガンホたちは最初まったく見当違いな方向に進んでいたが、キム・サンギョンが新しい捜査方向を示す。犯行があったのはいずれも雨の日で被害者は赤い服を着ていたという共通点を見抜いたのだ。さらには犯行の日には必ずラジオで同じ曲がリクエストされていることが女性警官の指摘によって明らかになる。そのあたりからソン・ガンホは鋭さを見せ始める。そのリクエストを出した男が捕まる。しかし彼は犯行を否定する。どこか謎を隠しているような怪しいそぶりを見せる。しかしDNA鑑定の結果犯人ではないことが判明する。呆然とするキム・サンギョンとソン・ガンホ。結局事件は迷宮入りとなった。

 その数年後、最初の被害者が見つかった畑脇の側溝を覗いていたソン・ガンホに、女の子が何をしているのかと声をかける。話しているうち前にも同じことをしていたおじさんがいたということを聞きだす。人相を聞くと特に特徴のない顔だったと女の子は答える。呆然とするソン・ガンホの顔がアップになって幕が降りる。

 犯人が分からないまま終わるところが欲求不満になるが、実話に基づいているのでその点はしょうがない。しかし映画としての出来はなかなかのものだ。連続猟奇殺人事件はアメリカ映画の専売特許だったが、この映画は血なまぐささを強調するのではなく、田舎の鈍重な刑事とソウルから来た敏腕刑事を組み合わせているためにコミカルな要素が生まれ、安易な二番煎じに終わっていない。ここにも韓国映画の水準の高さが示されている。

 監督は「ほえる犬は噛まない」のポン・ジュノ。韓国の監督は1本だけ成功して後は凡作が続くということがあまりないので感心する。俳優もそうだ。人気が出た後も、優れた映画に出続けている。韓国映画の勢いは一向にとどまる様子はない。「忍者ハットリくん」の実写版などを作っている日本映画が情けない。中国のチャン・イーモウも「HERO」に続いて同じ路線上にある「LOVERS」を撮っているのが気にかかる。全体として見れば、韓国映画は既に中国映画を抜いているのかもしれない。日本も国が映画制作に力を入れて、日本、韓国、中国が互いに刺激しあいながら傑作を次々に出すようになれば、アメリカ映画の呪縛から逃れることが出来るかもしれない。一体いつの日になるか分からないが。しかしそう遠いことではない気がする。

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コメント

ななさん ご無沙汰しております。コメントありがとうございました。

もう3年前の記事ですが、コメントをいただいたのはこれが初めてだったのですね。日付を見るとこのブログを開設して4日目の記事で、今から見るとだいぶ短い記事です。

「殺人の追憶」は韓国映画の水準の高さを示す作品の一つだと思います。コミカルな要素を取り入れながらも、サスペンス・ミステリーのつぼをしっかりと押さえている。猟奇殺人事件の不気味さと田舎ののんびりした雰囲気が見事に再現されていました。日本のものともアメリカのものとも違う、独自の境地を切り開いた作品で、日の出の勢いだった韓国映画の力量がみなぎっている作品でした。

お久しぶりです。
古い記事にお邪魔いたします。
この「殺人の追憶」は大好きな韓国映画です。
完成度の高さに,日本の刑事ものと比べて,唸ってしまいました。
最近は邦画もかなり頑張っていますが
韓国映画の層の厚さというものには毎度感嘆してしまいます。
ソン・ガンホさんは特に,ハンサムとはほど遠くても
顔の筋肉の動かし方や目の表情だけでも
素晴らしい演技のできる俳優さんですよね!

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